岡山地方裁判所 昭和62年(行ウ)10号 判決 1994年8月30日
原告
西山太一郎こと
鄭太一
右訴訟代理人弁護士
山崎博幸
被告
倉敷市長
渡邊行雄
右訴訟代理人弁護士
石井辰彦
右指定代理人
八木實
同
原茂樹
同
中野武士
理由
一 請求原因1の事実は当事者間に争いがない。
二 そこで、本件処分の適否につき検討する。
1 原告が、浄化槽の清掃により生じる汚泥等の収集、運搬につき、これをするために必要な一般廃棄物処理業の許可を有せず、また、現に、他の一般廃棄物処理業の許可業者に業務委託することもしていないことは、当事者間に争いがない。
右事実によると、原告は、浄化槽の清掃により生じる汚泥等の収集、運搬につき適切に処理する方法を有しておらず、原告には、浄化槽の清掃業の業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由があると認められる。従って、浄化槽法三六条二号ホ所定の不許可理由は、存在するというべきである。
2 原告は、浄化槽法三五条に基づく浄化槽清掃業の許可は、覊束処分であり、浄化槽の清掃の結果生じた汚泥の収集、運搬、処分については、廃棄物処理法七条の許可の際に考慮される事柄であるから、この点を浄化槽法三五条の許可の要件として斟酌することは不当である旨主張する。しかし、浄化槽の清掃の結果生じる汚泥等の収集、運搬につき適切に処理する方法を有しない場合は、浄化槽法三六条二号ホの不許可事由に該当すると解すべきであり、右事由の該当性を判断する際に、汚泥等の収集、運搬を適切に処理する方法の有無につき考慮するものであるから、原告の主張は失当である。
3 また、原告は、被告には、本件許可申請と同時に原告が申請した一般廃棄物処理業の許可をなすべき義務があり、右許可により問題は解決する旨主張する。しかし、一般廃棄物処理業の許可は、廃棄物処理法に基づき、市町村がその処理計画に照らし、処理の事務を円滑に遂行するのに必要適切であるか否かという、全く別個の観点からその許否を判断する自由裁量行為であるから、原告が浄化槽清掃業の許可申請をなしたことにより、当然許可すべきものでないことは明らかであって、原告の主張は失当である。
4 更に、原告は、一般廃棄物の処理は、本来市町村の責務であるから、原告が浄化槽汚泥等を「適切に処理する方法」とは、児島地区において、その直営により浄化槽汚泥を処理し得る十分な能力を有している倉敷市に処理業務を委ねることである旨主張する。しかし、一般廃棄物の処理事務は、市町村が策定した処理計画に基づいて遂行しているものである(廃棄物処理法六条、七条参照)から、原告が行おうとしている浄化槽清掃業により生じる汚泥等の収集、運搬を、倉敷市が当然に行う義務を負うものではないというべきである。なお、証人石井重信の証言、原告本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、倉敷市が、処理計画に基づき、児島地区において直営で行っているのは、し尿の収集、運搬のみであり、浄化槽汚泥等の収集、運搬については行っていないことが認められるのであって、原告の主張は、処理計画に適合しないものである。従って、原告の主張は、採用することができない。
5 以上によれば、本件処分は、適法であるといわなければならない。
三 結論
よって、原告の請求は、理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 矢延正平 裁判官 德岡由美子 濱本章子)